花鎖に甘咬み



「髪の毛がうまくまとまらないの……!」

「はあ?」



意味がわからない、という顔をする真弓。

男の子にはわからないかもしれないけれど、女の子にはいつだってこだわっていたいものがある。そのひとつが、髪だ。



いつもは下ろしていることも多い髪の毛だけれど、真弓と一緒に行動するなら、きっと動きやすい方がいい。

ジャマにならないように、ポニーテールにしようと思ったのだけれど……。



「う、ほら見て、ここがぴょこぴょこ出てくる〜〜っ!」



ひとつに結ぶだけのはずのポニーテールなのに、なぜか今日に限ってぜんぜんうまくいかない。

襟足のところが、ぴょこぴょこ飛び跳ねていて、これじゃあだめだ。


悪戦苦闘する私をじっと見つめたかと思えば、真弓は小首を傾げて。



「貸せ」

「へ……?」



なぜか手のひらを差し出してくる。

訳もわからず、ちょんと、私の手のひらを重ねて『お手』すると。



「ふは、ちげーよ。櫛とゴム」

「ええ……?」



言われるがままに手渡した。

すると真弓の指が私の髪をすくい上げる。




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