花鎖に甘咬み



「たぶん、かよ。マユの言うことは信用できへんな。なんせ〈猛獣〉やから」

「あっそ」



なら聞くなよ。

いちいち俺に弱音を吐き出すんじゃねえ、と文句のひとつやふたつくらいは言いたくなる。



「つうか、マユこそやろ。燈には会ってないの?」

「会ってねえな。数週間前に、家に乗りこんで来やがったが、追い出したっきり」

「へえ。昨日ココに燈、来たんやけどさ。酒飲んでベロベロになってた」

「アイツ、弱いくせによう飲むな」



適量は3%の酎ハイで、缶半分だ。

〈赤〉にいた頃は燈の飲酒量は俺が管理していた。目を離すとすぐに適量オーバーする馬鹿だからな、成人してるくせして自己管理がガバガバだ。



「んで、酔っぱらいながら、マユのことばっか気にしてた。マユのことが心配で心配でたまらないんやってさ、ぶつぶつ永遠に聞かされる俺の身にもなってよ」



心配、ねえ。


ちとせとよく似た背丈の男の顔を頭に思い浮かべる。

あんな顔して、食えない男だからな、アイツ。




「アイツが心配なんてする必要ねえだろ。俺相手に」





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