花鎖に甘咬み
「本で学ぶのがソレかよ」
「だって! 私はそういうことしたことないもん、してみたいんだもん」
「あー……、忘れかけてたけど、そういやお前生粋のオジョーサマだったな、たしか」
「“元” ね!」
「はいはい、“元” オジョーサマ、な」
呆れたように肩をすくめつつ、真弓は私に袋を持たせてくれた。ずしん、とした重みが嬉しい。にやにやしていると、真弓がこつんと頭をくっつけてきた。
そのまま、ぐりぐりしてくるから何ごとかと思えば。
「そんなちっせー夢くらい、いくらでも叶えてやるよ」
「ほんとっ!?」
もしも、お嬢様じゃなかったら。
生まれおちたところが、北川家じゃなかったら。
やってみたかったこと、いっぱいあるの。
真弓がそれを、わたしと叶えてくれるっていうのならこれ以上ないってくらい嬉しいことで、あからさまに目を輝かせた私に真弓は「ああ」と答えた。
そしてなぜか私の持つ袋の中から、比較的重そうな食材をいくつも奪っていく。じゃがいもやら牛乳やら、次々と。
「えっ、なんで取るのっ?!」
「重いだろ」