花鎖に甘咬み



「あなたの都合でよくわからないところまで連れてきて、それでモノ扱いするなんてさすがに自己中っていうか、失礼じゃないですか……!? せめて人間として接するとか、それくらいのこと……っ、もが、もごっ」



まだ全然言い足りないのに、青葉さんに口を覆われる。

抵抗すると、翡翠の瞳に鋭く睨まれる。



「お前、死にてえのか」

「……っ」

「テメエが無鉄砲なのは十分にわかった。わかったが、わきまえろ。今お前の目の前にいるのは純圭サンだ」



言い聞かせるように青葉さんが囁く。

口をぴたりと塞がれて、呼吸もままならない。生理的に涙がじわりと滲んで、それでも……。それでも。



「〈猛獣〉の傍にいたならわかるだろ、この街の人間がどれほど獰猛で容赦ないかなんて。女でも関係なく牙を剥く。────お前、消されるぞ」



だから、なんなの。
我慢しろっていうの?


そんなの、私は、ごめんだわ。



勢いよく首を横に振って、青葉さんの手のひらを引っ剥がす。勢いあまって、椅子ごと床に倒れこんでしまって、ガタタンッと派手な音とともに、右半身に鈍い痛みが走った。



「っ、つう……っ」



痛みに耐えながら、手足も思いどおり動かせない不格好な姿勢で、キッと睨みつける。

青葉さんも、ミユキさんも、純圭さんも。


我慢ならない。
だって。



「……っ、真弓は、そんなこと、しなかった!」




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