花鎖に甘咬み


獰猛で容赦ないって言うけれど。
真弓のことを〈猛獣〉だなんだって言うけれど。


真弓は、一度も、一度たりとも、そんな目で私を見たりしなかった。見下したり、踏みにじったりなんてしなかった、私のこと。



『俺は、お前のその覚悟を尊重する』



私の心をないがしろになんてしなかった。
ひとりの人間として、ちゃんと接してくれていて、それが嬉しかったんだ。


このひとたちは真弓を〈猛獣〉だなんて呼ぶけれど、私にしてみれば、このひとたちの方がよっぽど獣だ。


そんなひとたちに、私は、心を許さない。




「あなたの思いどおりになんて、させるもんですか……!」




床に崩れ落ちたまま、ふい、と顔を背ける。
すると「はー……」と純圭さんが鬱陶しげにため息をついた。


形のいい柳眉をぎゅっと険しく寄せて、顔を顰める。

そうして、相変わらず私を虫けらを見るように見下ろして、呟く。



「厄介な女」

「……や、厄介で悪かったですね……」



一応言い返してみると、見事に無視されてしまった。

冷たい無表情のまま、純圭さんは薄い唇を開いて。



「お前はなにが知りたい」

「え」

「人扱いしてほしいんだろ。なら、等価交換だ。俺はお前を利用する。その代わりにお前の求める情報くらいはくれてやる」

「……あの、それ、拒否権とか……」



そもそも利用されたくないのですが。



「ない」

「……」





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