花鎖に甘咬み
事実を言ったまでなのに、なぜか純圭さんは呆れたような目で見てくる。意味がわからない。
「な……なんでそんな目で見るんですか」
「寝言は寝て言えと思ってだ」
「は……はあ? 起きてますけど……ばっちり」
「にしては、寝ぼけたことを言うのな」
氷海の目が、私をじろりと見つめる。
視線の先を追ってみれば、私の首もとにたどりついた。
「そんだけ派手に本城の噛み痕をつけといて、って話だ」
「え……?」
「首。本城だろ」
純圭さんが、自らの首すじをトントンと示しながら目を細める。
それで、何のことを言われているか、やっとわかった。
伊織さんにも指摘された、あの紅い噛み痕のことだ。
「えと……はい」
「がっつり痕つけといて、本城とは何もありませんって。んな御託、誰が信じる?」
え……?
まさか、この痕があるから、〈白〉のひとたちは私を真弓の恋人だと思うってこと?
でも。
「真弓が噛むのは、昔からのクセだって……。私だけじゃなくて、他の誰でも同じようにするから、べつに特別ってわけじゃ」
噛みつきグセなんだって。
伊織さんがそう言ってた。
「お前、なにも聞かされてねえのな」
「へ?」
「言いそびれてるだけか、敢えて黙ってんのか、俺にはソッチの生ぬるい感覚は理解できないが」