花鎖に甘咬み


「根拠は」

「真弓は、そんなわかりやすい罠にみすみすかかったりしない」



そんな簡単に騙されるはずない。
だって、真弓だもん。

純圭さんが仕組んだことだって、すぐに気づくはずだ。



「だが、自分の女を助けにくるかもしれない。気まぐれにな」

「気まぐれ……」



そもそも私は真弓の女じゃないし。

たとえば、目の前で私が倒れたりでもすれば、助けてくれるかもしれないけれど。

真弓は、わざわざ私を助けに来たりするだろうか。

もともと、たまたま出会っただけの関係で、そばにいるから守ってくれるだけだ。私がいなくなったって、「そんなもんか」って真弓は元の生活に戻るだけなのかもしれない。



「純圭さんは、真弓は来ると思いますか?」

「さあ。俺は知らん」



吐き捨てるように言われてしまう。
そういえば、このひと、冷たい人なんだった。

椅子に縛られたまま床に転がる私を、未だに起こしてくれる気配もない。そもそも他人にあまり興味がなさそうだ。ずっと、顔色ひとつ変えず、淡々と話すんだもん。



……あれ? でも。

そんな純圭さんが、私を縛りつけているのは、真弓をおびき寄せる、ためで……。



「純圭さんは、真弓に会いたいんですか?」





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