花鎖に甘咬み
おろおろする私。
見かねたミユキさんがうんざりした顔で、純圭さんの代わりに口を開いた。
「保守派の〈赤〉、急進派の〈白〉。それくらいは聞いたことあるんじゃない?」
「あ……」
そういえば、真弓がたしか、そんなこと。
「その言葉の通りだよ。〈赤〉と〈白〉は似たり寄ったりの不良グループで抗争ばかり繰り返してるけど、行動理念が決定的に違うってワケ。〈赤〉は “守る” ことを重視してる。自分以外の大切な誰かを、命を賭しても守り抜く────それが〈赤〉の信条だ」
そこまで言って、ミユキさんは、「はっ」と乾いた笑い声を上げた。
「生ぬるくて虫酸が走るね、ほんと。〈赤〉が掲げる理想なんて所詮、陳腐な綺麗ゴトでしかないのにさ。いい年した野郎どもが夢見ちゃってカワイソウに」
「ミユキ」
毒づくミユキさんを、青葉さんがたしなめる。
チッと舌打ちしたミユキさんは、話を〈赤〉から〈白〉へと移す。
「対するボクら白薔薇は、完全な個人主義だ。〈赤〉みたいに群れたりしない。自分以外の他人を信用することほど馬鹿馬鹿しいことはないとわかってるからね。自分のためだけに生きて、散る。純圭さんを筆頭に“孤高”を理想とするのがボクら」
それを聞いて〈白〉のひとたちが、どうしてこうも冷たく感じるのかがわかったような気がした。
このひとたちは、ひとりでいることを理想に掲げているから。
そもそも、誰かと分かり合おうとなんてしていないのだ。
あれ、でもそれじゃあ……。
「真弓が〈白〉寄りって、おかしくないですか……?」