花鎖に甘咬み



「はっ、はい……」



どうしよう、頭のなかがパニックだ。

あれ? 純圭さんってほんとうに女嫌いなの……?


疑わしく思えてきて、青葉さんの方をちらりと見ると、青葉さんは私以上に衝撃を受けたらしく、完全に固まっていた。




「ありがとう、ございます……」




戸惑いながらも、一応椅子を起こしてくれたことに対する感謝を口にする。と、純圭さんは鬱陶しげに眼光を鋭くした。




「礼を言う余裕があるとは」

「……えと」

「よほど平和ボケしてるのか。お前の頭の中はさぞかし花畑なんだろうな」



眩しいものを見るように、純圭さんは目を細める。

よくわからないけど、「花畑」が褒め言葉ではなさそうだということはよくわかった。




「花畑じゃないです」




大真面目な顔でそう言うと、純圭さんはますます仏頂面になった。それで、「はー……」と長くため息をついたかと思えば。




「変な女」

「……! 変って!」

「お前みたいな人間見てると────ぶっ壊したくなる」




氷海の瞳にまっすぐ捕まって、息ができなくなる。

急に恐怖がじりじりとせり上がってきて、口がカラカラに渇いていく。目も逸らせずに、固まっていると。



「へぶっ!」



何の脈絡もなく、突然。
純圭さんの片手が私の両頬をはさみ潰した。


思わず変な声が漏れる。

と、同時に、近くにいた青葉さんも「ぎょっ!?」と変な声を上げていた。





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