花鎖に甘咬み
こく、と頷く。
追ってくる無数の腕を跳ねのけながら白く強い光の方へと真弓が駆けていく。腕をひかれながら、その背中を必死で追いかけた。
「……っ、ぁ」
スピードについていけない体力。
うまく動かなくてもつれかけた私の足にすぐに気づいた真弓は、いつもそうするみたく、腰にぐっと腕を回して私を抱えあげた。
そうなるのが自然なことかのように、すっぽり真弓の腕に体がおさまる。
「平気か」
伺うように、真弓の目が私をじっと見つめる。
「う、うん」
「もう少しだ。少しだけ我慢してろ」
「大丈夫だよ」
「嘘つけ。体、ガタガタ震えてんだよ」
「う」
さすがに腕のなかにいては、ごまかせないらしい。
一呼吸おいて、とんとん、と背中にあやすようなリズムで真弓の手のひらが落ちてくる。
「ココ切り抜けたら、お前の言うこと何でもひとつ聞いてやるから」
「え」
「だから、今はもうちょっとだけ大人しくしてろよ」
そんなの……いいのに。
震えるほどの緊張感があったのは事実だけれど、『大丈夫』だって言ったのは、虚勢なんかじゃない。真弓がいるから、大丈夫だって思えるの。
なんだか、さっきから真弓が、なんだか。
少し変だな、と思う。
過剰なほど気をつかってくれているというか……。
優し、すぎる……?