花鎖に甘咬み
きっぱり言いきられると、もうなにも言えない。
そういえば、タイミングよく登場した燈さんは、そもそも、どうして来たんだろう。真弓は燈さんが来ること、知っていたみたいだし。それに、今だって、協力してくれてるんだよね……?
「ちとせ」
振り向いた真弓が私の腕を掴んで。
真弓の腰に回させる。
「え、え」
「しっかり掴まっとかねえと、吹っ飛ぶぞ」
「ひえっ」
吹っ飛ぶなんて、怖すぎる。
思わず小さく悲鳴を上げると、真弓が薄く笑った。
「ほら、手ェ回せ」
「……っ、はい」
遠慮がちにぎゅ、と掴むけれど。
そんな弱い力じゃ足りなかったらしく、真弓が眉を寄せる。
「おい、ちゃんと掴まれって」
「か、かしこまりました」
少しだけ、強めてみる。
それでも、足りないらしい。
「もっと。足りねえ」
「え、まだ……?」
「体重全部預けろって」
振り向きざまに、真弓がぐいと私の体を引き寄せる。
「わぷっ」
勢い余って鼻先を真弓の背中にぶつけた。
密着するような体勢に、ようやく真弓は満足気に口角を上げる。
「それでいい。離すなよ」
「わ、わかった!」
「よし」
真弓がアクセルスロットルに手をかける。
「飛ばすぞ」