花鎖に甘咬み
「ひゃ……!」
とつぜんひんやりしたなにかが肌に触れて、体をすくめる。
見れば、どこから取りだしたのか、氷嚢を痣ができたところに当ててくれていた。
「ちゃんと冷やしとけ」
「う、うん」
言われたとおり、青くなっているところに氷を押しあてる。
「手」
「え?」
「手、貸せ」
きょとんとしながら、両手を真弓の方へ差し出すと。
ツンとした薬品特有の匂いがして、その正体がなにかを確かめるより先に、真弓が私の手首になにかを巻いた。
「湿布……?」
よれることなく、丁寧に貼られた白い湿布を思わずまじまじと見つめる。
それでも、真弓の手当ては終わらなくて。
「……!」
消毒液のしみたコットンを頬に押しあてられる。
ぴり、と刺激が走って、頬にかすり傷ができていたことに気づいた。たぶん……純圭さんに顔を掴まれたときにできたのだと思う。
けれど、見えるか見えないかくらいのほんとうに些細な傷だ。
当の私でも、今の今まで気づかなかったくらい。