花鎖に甘咬み
そんな小さな傷ひとつ、見逃さず、優しい手つきで消毒してくれる真弓は、なんだか────……。
「過保護……?」
「誰の話だよ」
「真弓が、だよ」
だって、私の傷なんて大したことない。
それよりも。
「真弓の方が、ずっと、怪我してるじゃん……っ!」
「あ? 別にこんなのいつものことだし大したことねえよ」
「そんなことないっ」
大怪我を負わずに済んだのは、よかった。
でも、無傷だったわけじゃない。
私を庇いながら行動していた真弓は、私よりもずっと、傷を負っているはずだ。
シャツから覗く腕には、生々しい切り傷も痛々しい打撲痕も見える。
「大したことあるよ」
「ねえよ。平気だから」
涼しい顔をして、腕をひらひらと動かす真弓。
思わずその腕を両手ではしっと掴んだ。
「大したこと、あるよ」
さっき、私がなんともないって言ったのを真弓は否定した。
だったら、私にだって否定させてほしい。
真弓が、平気だって顔するのを、私は否定したい。