花鎖に甘咬み
ならずもの
「……ならず、者?」
「そ。“指定危険区域” は分かるだろ」
「政府が決めた、立ち入り禁止のキケンな場所」
「そう」
政経の授業で、少しだけ習ったことがある。この国には数箇所、立ち入ることの許されない危険なエリアがあって、それは政府が管理しているのだとか。
詳しいことを先生は何も教えてくれなかった。
教えてくれなかった、というより、知らなかったのかもしれない。
「で、〈薔薇区〉もそのひとつってワケ。ただ、他の場所と違って、ココは人工的な危険区域」
「ジンコーテキ……」
「“ならず者”────過去に赦されない罪を犯したようなヤツ、更正する見込みのないヤツ、とにかく存在が社会の害になると判断されたヤツらをここに閉じこめておく。他域の治安を確保するのが目的でな。つまりは事実上の監獄、んで、一生出れねー」
ぞく、と背筋が凍る。
「全員、罪人ってこと……?」
思わず真弓を見上げてしまう。
色のない瞳、私を腕に囲うこのひとも、もしかして……と。
「……いや。その限りじゃねえよ。ココに送り込まれてくる奴は、それぞれ異なる事情もちだ」
“事情”。
じゃあ真弓は────。
きっと、真弓は“咎”もちではなく、“事情” もちなのだろうとなんとなく思った。赦されない罪を犯すような人には見えなかった。直感でしか、ないけれど。
「ま、やべーヤツしかいねえってことには変わりねーよ。それは、俺も含めて」
「……っ」