花鎖に甘咬み



呆れたような言葉なのに、声のトーンは呆れているというよりは、噛みしめているようで。



「……?」



不思議に思って、じっと真弓の瞳を見つめてみる。

カチリと視線が絡まって、真弓の目の色が明確に変わった。



私の後ろ首をふいに引き寄せて、真弓の顔がゆるやかに近づいてくる。


首もとに吐息がかかって、耳朶に真弓の前髪がかすめて────あ、噛まれる、なんて。




「っ、う……」




思った瞬間、首すじに真弓のとがった歯が触れた。

痛いか、痛くないか、ぎりぎりの力で食まれる。




「んん、っ」




ぞわぞわと背中に甘いものが駆け上がる。

また……、真弓の歯形が紅く、つけられているのだろうか。




『知らなかったか? 本城が噛み痕を残すのは、アイツが特別に思っている人間だけだ』




純圭さんに言われたことが、チカチカと頭のなかで点滅する。

ぐらぐらする思考回路のなか、真弓の甘噛みを抵抗することなく受け入れていると。




「……ちとせ」

「へ、あ……っ」





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