花鎖に甘咬み
名前を呼ばれて、ぱ、と顔を上げれば。
至近距離に真弓の顔。
妙に熱っぽい視線と、それから丁寧に重ねようとする角度。
迫りくるキスの予感に、一瞬たじろいで、それから。
「ま、だめっ、だめだからストップ……!」
今度こそ、触れる寸前のところで阻止した。
口もとをしっかり手で覆って、真弓から距離をとる。
「おい、逃げんな」
不服そうな真弓に、首をぶんぶん横にふった。
「もう、真弓と、き、き、キスはしない……!」
真弓は何も言わなかった。
口を開かず、続く言葉をうながしてくる。
覚悟のこぶしをキュッとにぎって、真弓を見すえた。
「別に、嫌なわけじゃないの……。真弓にき、きす……されるのも、嫌じゃなくて……むしろ」
ハッと口をつぐむ。
今、ものすごく恥ずかしいことを口走りかけた。
慌てて軌道修正する。
「だけど、そういうのは、お互い好きだって気持ちを確かめてからするものだと思うから」
「……」
「少なくとも、私は、そう思うから」
「……ああ」
真弓が頷く。