花鎖に甘咬み
暴走族。
〈赤〉と〈白〉の二大勢力。
赤薔薇と、白薔薇。
必死に情報を頭のなかで整理する。
だめだ、一気には覚えられないし、それに……。
フードの男の肌に刻まれていた紋章を思い出して、首を傾げる。あの薔薇は、赤でも白でもなく。
「あのひとたち、黒薔薇、だった」
ぽつり、呟くと、真弓は頷く。
「お前を追いかけ回してたのは “異端の黒” 」
「イタンノクロ?」
だめだ、漢字変換ができない。
呪文のようにとなえると「異端、の、黒」と分けて発音してくれる。
「〈赤〉〈白〉に次ぐ、第三勢力だな、簡単に言うと」
簡単じゃないよ、と思う。
かろうじて口には出さなかったけれど。
「さっき、二大勢力って言わなかったっけ……」
「ああ。もともと〈黒〉は治安部隊だ」
「治安?」
「夜間の見回り、浮浪者の保護、〈赤〉と〈白〉の抗争の鎮圧……そーいう役目だった」
“だった” ということは、今はそうじゃないってこと。
まあ、そうだよね……。
あのひとたち、どう見たって治安を維持しているようには見えない。夜に紛れる服装に、それからあたりまえのように取り出した拳銃。
思い出すだけで、体がすくむ。