花鎖に甘咬み
「今じゃあ、治安部隊は名ばかりで〈赤〉にも〈白〉にも属さない“異端”が〈黒〉を名乗って暴徒化してるってわけだ」
「それが、あのひとたち……?」
「ん。治安維持だの中立だの掲げてるが、正しくは “過激派” だな。場を治めるためなら、非道な手段も辞さない」
「……っ」
それが、あの、銃。
でも、いくらなんでも犯罪────。
「特に、ヤツらは〈薔薇区〉への不法侵入に厳しくてな。捕まれば、良くて拷問、悪くて……」
真弓が口を閉ざした。
たぶん、腕のなかにいる私の震えに気づいて、だ。
でも、言われなくてもわかる。
悪くて、“死” だ。
あれは脅すためのオモチャなんかじゃなくて、正真正銘、ほんものの拳銃で、私が逆らえば、迷いなくその弾は私の心臓を貫いていたのだろう。
「そんな顔すんな」
「……え」
「食われる寸前の獲物みたいな怯えきった面」
「っ、だって」
「助けてやるっつったろ」