花鎖に甘咬み
× × ×



「……!」



ズキズキと激しい左腕の痛みで目覚める。
ええと……私、たしか。


ハッと上体を起こすと。



「真弓……?」




真弓は、私の左腕を強く押さえて離さない。
じくじくと疼くような痛みで思い出す、そうだ、私、刺されて……。

意識が飛んでいる間に、きっと真弓がここまで運んでくれたのだろう。



今こうして問題なく体が動いてるということは、意識が飛んだのは、失血からではなくて、単にショックが大きかったみたい。


見慣れない天井をぐるり、見渡す。
きっとここが、真弓の言っていた目的地。



それから左腕にまた視線を戻す。

傷口には強く布が巻きつけられていた。
黒い布、よく見れば真弓のシャツが不格好にちぎれていて。

あのあと止血してくれたんだ。




「ありがとう。手当てしてくれて、それから、ここまで運んでくれて」





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