花鎖に甘咬み
「……」
「ごめんね、私が足引っ張ったよね。怪我して、迷惑かけて……」
気を抜いたのがダメだった。
あのとき真弓が咄嗟に声を上げてくれなければ、ナイフの軌道はそれないまま、背中のど真ん中を一突きされていた。
間一髪のところを、真弓に救われたのだ。
「真弓?」
おかしいな、真弓が何も答えない。
真弓がだんまりなんて変だ。
まさか、真弓もどこか怪我を────と慌てて顔を覗きこもうとするけれど、左腕をさらにキツく押さえられて、身動きがとれない。
「ま、真弓? どうしたの、なんか、変だよ?」
「……じっとしてろ」
「え、なんで……?」
「……止血してんだよ」
「止血って……」
まじまじと左腕を見つめる。
強く圧迫するような真弓の手のひらの感触は、たしかに止血するときの動きだけれど。
でも、もう。