花鎖に甘咬み
「明日」
名前を呼ぼうとしたけれど、ぴしゃりと遮られる。
あからさまに拒絶するような態度に、黙りこむしかなかった。
「朝、伊織とここで合流する」
「伊織さん? でも、ここには誰も来ないって……」
「計画を、大幅に変更する。そのために俺が呼んだ」
「計画、変更?」
「……ああ。明日になればわかる」
真弓が頷く。
相変わらずその表情は見えない。
妙に意志のこもった声だった。
けれど、うらはらに、その声が寂しげに、ひどく心細げに聞こえたのはほんとうに気のせいだったのか、確かめることもできずに。
「今日はもう目閉じて、寝てろ」
そっと。
それでいて強引に、真弓の大きな手のひらが私の瞼を覆って、暗闇へと誘った。