花鎖に甘咬み
シンデレラ
× × ×
ぱち、と目を開く。
こんな状況でも寝起きだけはいいのが私の長所だ。
「おはよう、ちぃちゃん」
「……! 伊織さんっ」
「数日ぶりだね、元気だった? 怪我したって聞いたけど、生きてて良かったね」
真弓が伊織さんを呼んだのは、ほんとうだったらしい。
銀髪をまじまじと見つめながら、ハッとする。
「真弓は────」
「うん? 見えてない? ちぃちゃんの腕握りしめながら爆睡してるけど」
「わっ?!」
違和感がなかったから、気づかなかった。
私の左腕を掴んだまま、ベッドに上体をもたげている。
ベッドのそばの椅子に座ったまま。
よくこの状態で眠れるなぁ。
……あれ。
「えと、伊織さんはどうやってここに入ってきたんですか」
真弓が眠っていたのなら、入口は施錠されていたはずだ。
蹴破ったとかなら、さすがにその物音で目覚めるはず。
「普通に、マユが入れてくれたよ」