花鎖に甘咬み
「え? でも、真弓は寝て……」
「さっきまで起きてた」
「そう、なんですか?」
「ん。俺が来たらびっくりするくらいすぐ寝落ちたけど。たぶん、俺と合流するまでは気が気じゃなかったんだろうね。もう二度とちぃちゃんに手ェ出されないように」
言いつつ、伊織さんは真弓の前髪を指で払った。
現れた寝顔は、やっぱり彫刻みたいに綺麗。
それでいて、眠っていると子どもみたいに幼くも見える。
「俺、マユの寝顔なんてはじめて見たかも」
伊織さんは真弓の閉じた瞼を物珍しそうにまじまじと観察した。
「マユはショートスリーパーっつうか、寝ないからさ」
「……真弓も、そう言ってました」
「でも、ちぃちゃんがいると眠れるんでしょ?」
軽く肩をすくめた伊織さんは。
「そろそろマユのこと起こしてやってくれない? 俺が起こすと、なんか気色悪いし」