花鎖に甘咬み

× × ×


中華風スープに野菜炒め、ごはん。

さっと作ったクオリティには思えない、相変わらず美味しい伊織さんお手製の料理をもぐもぐと咀嚼しながら、ふたりの話に耳を傾ける。



「要するに、〈赤〉を動かして〈白〉の連中を鎮圧する。その時間稼ぎの間に、俺ひとりで〈黒〉をどうにかしろってコトだよね」



「ああ。具体的には燈が引き続き俺の囮をやる。花織と下のヤツらが〈白〉の勢力を囲んで潰す。ここまで打ち合わせ済みだ。お前には、目くらましを頼みたいんだよ」



「無茶言うねー。連日の衝突で〈赤〉も相当疲弊してるんでしょ。ソレ、成功する見込みはあるわけ? 今回の戦闘でマユが生き残る保証は?」


「さあな。────ただ、もう後がねえんだよ。チャンスは今夜しかない」


「……俺としては、マユが生き残ってくれないと作戦に乗る意味がないんだけどね。報酬もたんまり貰わないとだし?」


「お前は報酬とかどーせ興味ねえだろ」


「バレた?」



おどけたように肩をすくめる伊織さん。

さっきから真弓と伊織さんの間では物凄いスピードで言葉が行き交っている。

当然、私が口を挟めるわけがなく、空気を読んでただじっと黙っていた。



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