花鎖に甘咬み

気づいたとたんに、頭が真っ白になった。



真弓の様子も、あっさり〈黒〉の人たちと出くわすのも、行き止まりに追い詰められることも、全部全部、真弓の狙ったとおりだったということだ。

この状況こそが真弓の狙いだったと考えれば、辻褄が合う。

私を〈外〉に逃がす、それだけのために、真弓は。




「なんでっ?! 私、こんなこと頼んでないっ!」

「元々、俺とお前は住む世界が違えんだよ。それを元通りにするだけだろ」


平気な “ふり” をして真弓はそう言うけれど。


「……っ、なんで」




こんなことってない。最低。ひどい。あんまりだ。


それなら最初から私を助けなければよかったじゃん、私を拾わずに、一度〈外〉に出たときにもっと冷たく突き放して、キスなんてせずに笑顔なんてみせずに、────別れ際に苦しそうな顔なんてせずに。




「ばかばかばか!真弓のばか!」




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