花鎖に甘咬み
非難の言葉とともに、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。我慢ならなかった。
どうして、ひとりになろうとするの。
どうして、孤独になろうとするの。
どうして、諦めてしまうの。
悔しい。
悔しいんだよ。
悔しくてたまらない。
「っ、ばか」
「はいはい、馬鹿でいーよ」
淡く口角を上げた真弓は、私の頬に伝う涙を手の甲でぐい、と拭った。
そして、そのまま私の顎をそっとすくい上げる。少しの沈黙ののち、真弓の唇が開いた。
「お前には帰る場所がある。……不満だろうが、そのくらいのことお前ならどうとでもできんだろ。身ひとつでこんなところに飛び込んでくる気概があるなら、親のひとりやふたりくらいどうにかしてみせろ。────お前の “運命” なんてその程度だって俺が保証してやるよ」
「……っ、や」
嫌だ。
首をふるふるとひたすら横にふる私に、真弓は見たこともない、少し触れれば壊れそうなほど優しい笑顔を浮かべて。
「ちとせ」
後ろ首をぐい、と引き寄せられる。
唇がぴたりと重なって、奥の奥まで奪うように口内を食らいつくされて、惜しむようにそっと離れた。