花鎖に甘咬み
ふー……と息をついた燈は、目を細める。
「なあ真弓。本当は、あの子のこと、手放したくないんじゃないの。どうしても欲しくて、欲しくて今にも気が狂いそうなんじゃないの?」
「なに、言って……」
「要するにさ。ちぃちゃんのこと、好きだろ? そばにいたいんだろ? って聞いてんの」
ざらり、と本心を炙り出すように燈の言葉が心臓をなでる。
苦いものが喉の奥から湧き上がってくる。“好き”なんて、そんなもんはもうとっくに飛び越えて────だからって、口にしていいものじゃない。
「黙っても無駄。だって、真弓の顔に書いてあるから」
「は? 俺の?」
「気づいてないの? ポーカーフェイス、とっくに崩れてるけど。余裕ないのバレバレ」
「……」
ちり、と焦げつくような痛みが走る。
「好きなら好きって言えよ。欲しいなら欲しいって認めなよ。だだ漏れなくせして、意地でも口にしないのは強がってるつもり? それともまだ怖気づいてるんだ? 俺は〈猛獣〉だからって?」
別れ際に、強引に重ねた唇の感触もまだ残っている。
手放し難くて、惜しくて、俺の方から欲しがったキスだった。
『次にキスするときは────5回目のキスは、ちゃんと、私のことが好きって気持ちで、してほしい』
『なんでもひとつ、言うこと聞いてくれるんでしょ?』
あの約束を忘れたわけじゃない。