花鎖に甘咬み
「……不安なんだよ。自信がない」
「自信?」
「誰にも愛されなくなって、金と引き換えにこんなところにぶち込まれるような人間だから……そんな男に価値なんてないだろ。たとえ〈外〉に出れたとしても、ちとせの隣にいる資格なんて、俺には────」
「それさあ。あの子がそう言ったの?」
は、と息をのむ。
目からほろりと鱗が落ちた瞬間だった。
『真弓が私にとって、たったひとつの希望だから』
『誰のそばを選ぶのかは私が自分で決めるの!』
『私を、真弓の隣に置いてほしい』
思えば、ちとせは、いつも。
「ったく、真弓は自己完結しすぎ」
「……っ、ああ、そうかもな」
「それにあの子にとって、真弓が無価値なわけないでしょ。ここにいる間、真弓はあの子のことをちゃんと守ってた。“守るべき存在” を見つけられた人間は、強いんだよ。きっと、真弓はあの子のためだったら何だってできる。真弓にとってちぃちゃんは、そういう唯一無二の存在」