花鎖に甘咬み


『まだ、やらなきゃいけないことが残ってる!』




真弓にもう一度会いに行く、今度こそは諦めない。

決断した私が最初にしたことは、“燈さんに連絡をとること” だった。



燈さんからもらった、あの小さな紙切れには数字だけが書き連ねられていた。きっと電話番号だ、と思った私はその番号にかけた。



ダメ元だった。まず燈さんが電話に出てくれるとも限らない、たった数回顔を合わせただけの私の話に耳を傾けてくれるかも未知数で、真弓を〈薔薇区〉から連れ出したいなんてわがままがあっさり通るとも思えなかった。



『もしもし、“北川ちとせ” ちゃん?』

『……え、どうして私だって』

『そろそろかけてくる頃だと思ったよ。真弓のことでしょ?』




予想のすべてに反して、ワンコールで電話に出た燈さんは、こちらが切り出すよりも先に、私の目的を言い当てて、拍子抜けするほどあっさりと頷いた。




『全面的に協力するつもりだよ』

『っ、いいんですかっ?』

『いいもなにも。────きみは、救世主だからね』






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