花鎖に甘咬み
それから数日かけて計画を練ったの。
電話越しに燈さんたち〈赤〉陣営のひとたちと、それからその話に私の隣で耳を傾けていた唯月くんが〈外〉からできることを提示してくれた。
計画を実行するのはなるべく早い方がいい。真弓の行く手を阻む政府側の組織である〈黒〉陣営、彼らに悟られないうちに。
……という、燈さんの言葉で、計画が一通り立った翌日である今夜、決行することになった。
『とりあえず、ちぃちゃんにはもう一度茨の柵を越えてきてもらう必要があるね。そこで、〈赤〉の誰かと合流────そうだな、花織が適任か』
そんなわけで、唯月くんの力を借りつつ────あのときみたいに屋根の上から飛び降りる、なんて無茶な真似はせず────本来、私ひとりでは越えられるはずもないあの高い柵の向こうへ足を踏み入れて。
事前に打ち合わせていたとおり、その場所で待ちかまえていた花織さんと合流して、そして、今、猛スピードで風を切るバイクの上に乗っているのである。
ひらひらと目の前ではためくナイフのような銀髪を見ていると、もうひとり、彼と瓜二つの銀髪が頭のなかをよぎる。
「伊織さんは……今、〈黒〉の人たちと闘ってくれてるんですよね」
「闘うっつーか、戦力削ぎ落としてるんやろ。真っ向勝負せん、ずる賢いやり口でな」
「でも、ひとりで相手してるんですよね」
「アイツはあんたが思ってる数倍は厄介、そう簡単に崩れない。アイツからも逐一連絡来てるし」