花鎖に甘咬み
さすがに、子供だましだろうか。
こんなことじゃ、純圭さんは動かせないだろうか。
急に怖くなってきて、きゅっと目を瞑って返事を待つと。
「いいだろう」
「……え」
「対価として認めると言ってるんだ」
「え、いいんですか?」
驚いて顔を上げる。
見れば、ミユキさんと青葉さんもぎょっとして純圭さんを見つめていた。
「なんだその顔は。お前が言い出したことだろう」
「だ、だって、チョコレート、ですよ……?」
「はあ。価値の見出し方は人それぞれだ。俺がいいと言っている。それともなんだ、撤回されたいのか?」
「い、いえ! それは困ります……」
慌てて首を横にふると、もぐもぐとチョコレートを咀嚼し終えた純圭さんが、ふっと上機嫌に口角を上げた。
どうやら、正真正銘の甘党らしい。チョコレートひとつでこんなに変わるとは。