花鎖に甘咬み



「この女の指示どおり、〈白〉の特攻部隊を動かす。お前ら、指揮をとれ」

「はっ」



指示を受けた青葉さんとミユキさんが立ち上がって、駆けていく。その後ろ姿をぼんやり見送って、慌てて我に返る。



「あ、ありがとうございますっ!」

「礼はいらない。あくまで“交渉”だ」

「……!」

「俺は今から、宍戸兄と合流する。要するに、〈黒〉の本部の足止めをすればいいのだろう」




こくり、と頷くと、純圭さんはくるりと背を向ける。

私も、花織さんのところに戻らないと。


純圭さんと会うことは、きっともうない。
そう思ったタイミングで。




「本城に似合いの変な女だな、全く」




呆れたような、それでいてどこか温もりのある純圭さんの独りごちる声が届いた。




< 315 / 339 >

この作品をシェア

pagetop