花鎖に甘咬み
× × ×
走る、走る。
花織さんたちと別れて、真弓とふたり、月明かりさえ上手く届かない暗い道を探りながら駆ける。
キンと冷えた空気に包まれて、荒く吐き出した息が白く凍る。季節は冬、震えるくらいの気温のなかで、握った手のひらだけが火照っていた。
「はっ、はぁ……っ、真弓?」
おかしいな。
真弓の動きがいつもより鈍い気がして、首を傾げる。
相変わらず足は速い、けれど……その動きはどこかを庇っているようなぎこちなさがあって。
「もしかして、どこか傷めてるっ?」
「……っ、ああ、足をちょっとな」
「大丈夫っ? 痛いよねっ? ちょっと休む……?」
「いや、いい」
立ち止まろうとした私を、くい、と真弓が引く。