花鎖に甘咬み


「真弓、こっち!」



頭のなかに叩きこんだ〈薔薇区〉の地図を、必死にたどりながら、真弓の腕を引く。もう少しだ。もう少しでたどりつく。


その場所で、唯月くんが〈外〉へと抜け出すルートを確保してくれることになっている。

皆が〈黒〉のひとたちを足止めしてくれている、今のうちにたどり着けば────。


ふいに、真弓が何かを察知して眉をぴくりと動かす。



「ちとせ」

「っ!」

「右から来る────っ、邪魔」



言ったそばから、右の物陰から黒ずくめの男がふたり飛び出してくる。鮮やかな手刀で真弓がしとめて、崩れたそのひとたちには黒薔薇の紋章が刻まれていた。



「まだいるな。1、2、3……5か」

「そんなにっ?!」

「多分、この先もうじゃうじゃ出てくる。アイツらも馬鹿じゃねえからな」



息を呑むと同時に、真弓がカウントした男たち────正確に5人、目の前に立ちはだかった。

一瞬、体がすくむ、けれど。



「大丈夫だ。突っ切るぞ」

「っ、うん!」




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