花鎖に甘咬み
「案内はお前に任せた」
そう言って、真弓は行く手を塞ぐ男たちを蹴落とす。
怪我しているとは思えない足さばきで、ひとり、ふたり……できた空間目がけて、私はまっすぐ走った。
怖くない。
真弓がそばにいるだけで、私は、なんだってできるような気がする。まるで魔法みたいだ。きみを思う気持ちが私を強くする。
「真弓! この角を曲がったら、もうっ」
「────ああ」
追手は着実に増えてきていた。
バタバタと慌ただしい足音が無数に響く。
振り向かずに、ただ前を向いて、真弓の手だけ握って、信じて、走る。
「逃がすな!」
「〈猛獣〉を捕らえろ! この際生死は問わない、〈外〉に出すな! 上からの指示だ!」
吠えるような声が背中を追いかけてくる。
もうちょっと、もうちょっとで────。
「ちとせお嬢様!! こちらです!」
「っ、唯月くん!」