花鎖に甘咬み

苦楽をわかつ


× × ×



シャッ、とカーテンを開けると明るい太陽の光が差し込む。

眩しさに目を細めて、清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んで。

────ベッドの上で目を閉じている真弓のそばに戻る。




「真弓、まだ起きないの……? もう朝なのに」




ぴくりとも動かない真弓に、少し怖くなる。
手のひらをおそるおそる握ると、あたたかくて、ほっとした。



「ねえ、そろそろ目を覚ましてよ」




私の声がやけに大きく聞こえるのは、この部屋がしんと静まり返っているからだろう。白い壁、白い天井、ベッドがぽつんとひとつあるだけのだだっ広い部屋はなんだか寂しかった。



────脱出作戦の、あの夜。

あのあと、結果的に真弓と私は〈薔薇区〉からの脱出に成功した。



〈黒〉のひとたちが拳銃の引き金を引くのと、私が真弓の手を掴んだのは、ほとんど同時だったみたい。

銃声にもひるまず、手を離さなかったから、そのあと真弓は柵の外側に命からがら抜け出して。



だけど、〈黒〉のひとが放った銃弾のひとつが、真弓の脇腹に命中していた。それから────既に負っていた足の傷が開いて悪化していて。誰がどう見ても酷い状態だった真弓は、すぐに医者にかかることになった。



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