花鎖に甘咬み


「グロいもん見せて悪かった」

「え……? あ、傷口の話……?」

「お前、ああいうの見慣れてないだろ」


たしかに、慣れてはいない。


それは生々しい傷口だけの話じゃない。

包帯を巻くときに、自然と目に入ってきたのは、無数に残った古い傷跡。

ひきつれたようなその跡は、今まで真弓がどう生きてきたのかを物語っていて────でも。でもね。



「大丈夫。平気だもん」

「嫌そうな顔してただろーが」

「あれは、嫌だったんじゃなくて……痛そうで、見てるだけで私まで痛くなってきたというか」



早く、癒えてほしくて。

でも、傷口を見るのが嫌だ、とか、真弓に残る傷跡が気になる、とか、そういうのではまったくないのだ。

知っていてほしい。



「私、真弓のこと、真弓が思ってるよりずっと、大好きだよ」

「……っ、は」

「今のも昔のも、傷口も全部ひっくるめて、大好き」


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