花鎖に甘咬み


「な、なに……」

「お前、イイ目してんな」



目……?



「あー、自分じゃわかんねえ?」

「目? 私の目、どこか変っ?」

「は、ちげーよ。キラキラしてんだよ、アホみたいに」

「アホ!?」

「食いつくとこがちげえだろうが。綺麗だっつんてんの」

「え……」

「ちとせのその目、すげえ好きだわ。……食らいつくしたくなる」

「っ、んぅ……!?」




抵抗するスキもなかった。


押し当てられるように、ふにゅ、となにかやわらかいものが唇にふれて────生ぬるいそれが真弓の唇だと気づくまで、そんなに時間はかからなかった。




「っ、ぅ……」




キス。
今まで、一度もしたことない。


それがこんな形で……唐突に奪われてしまったというのに、嫌な気持ちになんて全然なれなくて。

こんなの、おかしい。



おかしいのに。

ぶわわ、と体の奥から熱がのぼってきて、顔を真っ赤にさせながら必死に真弓の獰猛なキスを受け入れる。



あつい舌……らしきものが、くすぐるように歯列をなぞって、真弓の唇が薄くひらいて。




「っ、んぁ」




かぷ、と上唇を甘く食まれる。

そこまですると、びっくりするくらいあっさり、終わった。



真弓が顔を離して、見るに堪えない銀糸がぷつん、と宙にとぎれる。




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