花鎖に甘咬み


「おい」

「うーん……」

「ちとせ、着いてこねえなら置いてくぞ」

「わっ!」

「わっ、じゃねーだろ。ちゃんと前見て着いてこいよ。ただでさえ危なっかしいんだから」




ひとこと余計だな。

……っていうか。




「ちょっと待って。結局、ここ、どこなの?」

「……。さっき説明しただろうが」

「え? さっき?」

「……」




じろり、睨まれる。
無言の圧がすごい。



そういえば、私が考えごとに夢中になっているときに、真弓がなんだかごにょごにょ喋っていたような……。


お、思い出せない……!




「ごめんなさい、聞いてませんでした……」

「んなことだろーと思ったよ」




呆れたようにため息をつかれる────かと思ったけれど、予想に反して、真弓はふっと口角を上げて柔らかく笑う。


真弓って、肝心なところではいつもポーカーフェイスなくせに、意外とよく笑うひとなんだな。


思い返せば、些細なことで、よく笑っているような気が。





「ココ、俺の家」




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