花鎖に甘咬み
「……へ?」
「家っつう言い方はアレだけど。────ま、“隠れ家”ってヤツだな」
隠れ家……。
ここが、真弓の……。
薄暗い辺りをひと通り見渡して。
「それならそうと先に言ってよっ!」
「急にデケー声出すなよ」
「だって! 真弓が何の説明もなしに 『入るけど』とかしれっとしてるから! こっちはなにもわかんないから、ふつうに怖いの! 入った先で……ほら、バケモノと出くわすかもしれないしっ」
「バケモノ、ねえ」
くつり、真弓が喉奥で笑う。
うっ……、自分でも今の言い回しは子どもっぽかったって思ったけど……!
わかってよ、ことばのあやってやつだ。
つまり……、怖かったの。
ノコノコと入った先で、さっきの花織さんとか……、〈黒〉のひとたちとか、待ち伏せしているかもしれないって。
思い出すだけで、今だって背すじがゾクッとするのに。
「真弓の家なら、はやくそれを教えてくれれば」
何度も聞いてたのに。
どこに行くのって。
「“隠れ家”っつったろ。わざわざ隠してるもんを、誰に聞かれてるかもわかんねーようなとこで言えるか」
「う……たしかに」