花鎖に甘咬み



「ふ、ははっ、お前ってほんと最高」



空腹のあまりお腹をおさえて、涙目になる私。
真弓はなぜか楽しそうに笑って。



「この状況で腹減るか? のんきっつーか、危機感ねえっつーか、……期待裏切んねえな」

「なにか言った?」

「いーや、別に?」



軽く肩をすくめながら、真弓が入ってきた隠し通路の方へと向かっていく。

あわててその背中を追うと、真弓が首だけ私の方へもたげて。



「ちとせ、なに食いたい?」

「えっ」

「ちょうど飯にしようと思ってた。せっかくだから、好きなもん選ばせてやる」

「いいの?」

「こんなトコにいるんだ。美味い飯でも食わねえとやってけねーだろ」




“美味い飯” の、ワードに私の目はわかりやすく輝く。


ごはん、大好き。
食べるの、大好き。


でも、選べって言われてもそんな急に……、あ。




「ねえねっ、真弓! 私あれ食べてみたいの! お寿司!」

「寿司?」

「うんっ。聞いたことあるんだよね、レールの上をお寿司がくるくる回るレストランがあるって!」

「……回転寿司?」

「そう、それっ!」




こくん、と頷く。


うわさに聞いたことがある。

お寿司が乗ったお皿がくるくる回っているんだって。

見たことないけれど、どんなのだろう。
なんだか、楽しそうだよね。



「行ってみたいの! だめっ?」



真弓の目をじっと見上げて手を合わせると。
真弓はちょっと困惑した様子。



「お前、そんなのでいいのかよ」

「え、どうして?」

「回転寿司の寿司って、ちとせが今まで食ってきた寿司より断然ふつうだと思うけど。たぶん」

「なんでっ? ふつうじゃないよ、だって回るんでしょ?」

「回るけど」




< 51 / 339 >

この作品をシェア

pagetop