花鎖に甘咬み
「ふ、ぅ……、んん」
柔らかく呼吸を塞がれて。
酸欠ぎりぎり、うっすら生理的な涙を浮かべたころに、ようやく離れていく。
心臓がバクバクうるさい。
壊れちゃうのかと思うほどドキドキしていて、こっちはいちいち必死なのに、真弓は平然としている、ずるい。
「こんくらいのキスでへばってんじゃねーよ」
「〜〜……! 今の、なにっ、なんでっ?!」
「目の前にお前がいたから、つい」
「つい!?」
「減るもんじゃあるまいし?」
いたいけな乙女のキスを、「つい」で奪うな。
なんだと思ってるんだ。
……なのに、本気で嫌だとは思えない。
たとえば、お父様が決めた相手とのキスなんて想像するだけで背筋がぞわぞわして耐えられないと思うのに。きっと、平手打ちでもなんでもして、なんとか逃げ出すと思うのに。
「減るもん! 私の純情がすり減っちゃうんだから!」
「ふは、そーかよ」
屈託のない笑みを向けられて、キュンとする。
ああもう、これって、私────。
頭のなかで “恋” の一文字がちかちかと点滅する。
「ちとせ」
「うん?」
「覚悟はあるんだろうな」