花鎖に甘咬み
走り出した私を追いかけてくる男たちが何か話しているけれど、うまく聞き取れない。……というか、まったくもって、そんな余裕はなかった。
ここで復習しておこう。
私、北川ちとせ、16歳、性別女。
家出したてほかほかの現役JK、元北川グループ社長令嬢。
そして、体育の成績は、中高通してオール3。
その平々凡々の体力が、ここにきて急に向上する────なんていう都合のいいことが起こるはずもなく。
「……っ、来ないでっ!!」
「ルセエ、侵入者は捕える、それがココの規則だ」
だから、ここ、ってどこっ?!
疑問ばかりが増えていくけれど、質問したところで答えてくれそうにもないひとたちに、なぜか、追われている。
追われているというか、もうすでに────。
「っ、きゃ……っぅ!」
うしろから肩を掴まれ、つんのめる。
あっけなく、追いつかれてしまった。
悲鳴を上げるとギロリと睨まれた。
「嬢ちゃん、ゲームエンドだ、諦めろ」
フードの中の冷たい瞳。
このひとが何者なのか、これから私をどうするのか、皆目見当もつかない……けれど、私は。
すう、と息を吸って。
上体を反らす。
「っ、終わってたまるかあっ!」