花鎖に甘咬み


真弓にぎゅっとされる力とか、体温とか。
感じているうちにじわじわと実感がわいてくる。



「夢じゃなかった……」



ほっとした。

目が醒めたら、ぱちんと泡みたいに真弓も隠れ家も〈薔薇区〉も全部なくなっていて、すべては夢でした、なんてオチじゃなくて。



「夢でたまるかよ」



私が独りごちるのを聞いた真弓が、目を瞑ったまま、呟く。



「せっかく、お前のこと捕まえたのに」

「……え?」

「……」



今の、どういう意味……なんだろう。

気になる、けれど、真弓はさっきからずっと目を閉じたままだし、寝ぼけて言っている寝言的なものなのかもしれないよね。

いちいち追求したところで、鬱陶しがられるかもしれない。


ていうか、それより。



「真弓、起きて、もう朝だよ?」

「……何時」

「7時! 朝です!」

「まだいいだろ……」



どうやら、真弓は朝弱いらしい。

固く閉じた瞳を開くこともなく、眠そうな口調で文句を言ってくる。それで、すやすやと眠りにつこうとするから。



「と、とりあえず、私を解放してくれませんかね……?」



二度寝するのは自由かもしれなくても、私はそろそろベッドから出たいのです。それなのに真弓にがっちりホールドされたままだと、動けない。



「……無理」

「え゛っ」





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