花鎖に甘咬み
思わず二度見してしまう。
真弓はやっぱり私の腰に手を回したまま。
寝ぼけているくせに、力だけは強くて、逃れようたって逃れられない。
ふぬぬ……と必死で格闘していると。
「こら、逃げんな」
「な、なんで……っ」
「ちとせ、抱き枕にちょうどいいんだよ。じっとしてろ」
「抱き枕じゃないもん……!」
「抱き心地がいい」
なぜか言い直してくる。
でも、それって結局同じ意味じゃんか。
私は抱き枕じゃないもん、ほんとうに抱き枕だったら、真弓にぎゅっとされたって心臓がバクバクしたりしないもん。
「もー、真弓、いい加減起きてよーっ」
ゆさゆさ揺さぶるも、まったく効果ナシ。
と思いきや、ぱち、と真弓の瞼が重たそうに持ち上がった。
まだ眠いのか、とろんとした瞳が私をぼーっと見つめてくる。
それで、ふは、と柔らかく笑った。
「はよ」
「……おは、よう?」
「あー、ちとせのおかげでよく眠れたわ」
「私のおかげ……?」
「ああ。昨日、お前のアホみたいな寝顔見てたら、久しぶりに眠くなった」
アホみたいな寝顔、は不本意ながら一旦置いておくことにして。
「久しぶり、って……普段、寝てないの?」