竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~

(2)ジェラールへの直談判


 夜、外出先から戻ってきて私室に向かうために回廊を歩いていたジェラールは、ジェラールの私室やごく親しい側近達の執務室が集まる皇宮区の手前に、メイド姿の若い女ががぽつんと立っているのに気が付いた。

 近付いてみると、先日魔獣の森で保護した少女──ミレイナだ。
 何をするでもなく所在なさげに立ち尽くしており、視線は皇宮区の方向を向いている。
 寒いのか、時折メイド服の袖から覗く白い手を擦り合わせていた。

「何をしている?」

 声を掛けると、ミレイナはびっくりしたように振り返った。

「ジェ、ジェラール陛下」

 ジェラールが近づいてきたことに全く気が付いていなかったようで、ミレイナは慌てたように頭を下げる。ジェラールは片手でそれを制し、顔を上げさせた。

「こんな夜にこんな場所で立ち尽くしているとは、何事だ?」
「それが……」
「何か用事があったのだろう? それとも、お前は夜遅くにふらふらと出歩く趣味でもあるのか?」

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