竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 本当はあの笑顔を自分の手で守ってあげたいのに、手の届く範囲で保護してやれないのがとてももどかしかった。

 魔獣達を撫でながら、ジェラールは自嘲気味にフッと笑みを漏らす。

(よもや自分がこんなにも未練がましい男だとは思っても見なかったな)

 ミレイナはラングール国を離れてアリスタ国に帰ることを望んだ。
 ジェラールはラングール国の竜王なのでアリスタ国で暮らすことはできない。つまり、彼女は自分が近くにいない生活を望んだのだ。

 帰りたい、と言われたとき、頭が真っ白になった。
 本当は全力で止めたかった。

 けれど、ミレイナの薄茶色の瞳を見たら、止めることができなかった。まるで泣きそうな、何かから逃げたいような、そんな瞳をしていたから。

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