竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
「こうされるのは、嫌か?」
「嫌ではないのですが、恥ずかしいです……」
「誰も見ていない」

 ミレイナは辺りを見渡す。先ほどまで何人かいたはずの魔獣係は今は一人もいない。
 主の空気を読み取ることに長けた、非常に優秀なメイドである。

 ミレイナの「なぜ!?」という心の声が聞こえてきそうだが、それは無視して頬に口づけた。白い肌がピンク色に染まる。

 鼻孔をくすぐるのは香油のフローラルな香り、頬を撫でるのはぴこぴこと長い揺れる耳。
 その様子から嫌がっていないということはわかるので、ジェラールは遠慮なく愛でる。ふわふわの耳をくすぐり、白い肌を撫で、ついでに髪や頬、おでこや唇にも口づけを落とす。

 もちろん、ファイヤーレパードのもふもふとやわらかな肉球も存分に堪能させてもらった。


    ◇ ◇ ◇


「待たせたな」

 およそ三十分後、一見すると冷然とした無表情で戻ってきたジェラールをラルフは出迎える。

「いえ、大丈夫です。気分転換はできましたか?」

 ラルフはぺこりと頭を下げた。

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