竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
「国境沿いの草原に、私が放置した籠がまだ落ちているかもしれないわ。魔法石と、たくさんの人参が入った──」
「人参?」
「ラングール人参よ。好きなの」

 ミレイナはなんだか恥ずかしくなって、顔を俯かせる。

 まさか誰も、人参を主食にしている人間がいるとは思わまい。
 正確に言うと人間じゃなくてうさぎ獣人だけど、それは今ここで言う必要なないので勿論説明はしない。

「話はわかった」

 しばらく無言でこちらを見つめていたラウルは、おもむろに立ち上がる。
 ミレイナはハッとして顔を上げた。

「あの、私はこれからどうすれば?」
「まずは傷を癒やされよ。部屋からは無断で出ないように。食事はしばらく、部屋に運ばせる」

 それだけ言うと、ラウルはすたすたとドアの方へ歩いて行き、部屋を出て行った。
 ドアがバタンと閉まり、足音が遠ざかってゆくのか聞こえた。


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