竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 ミレイナは笑みをこぼしてゴーランの頭と首の辺りをわしゃわしゃと撫でる。大きさは比べものにならないが、まるで犬のようだ。
 昔ペットショップで世話をしていたシベリアンハスキーを彷彿とさせる。
 ジェラールは入口からこちらを振り返り、意外そうな顔をした。

「魔獣を怖がらないなど、珍しいな」
「だって、いい子です。可愛いわ」

 ミレイナが笑顔でそう答えると、ジェラールは少し考えるように黙り込んでから口を開いた。

「王宮の外れに、魔獣を保護している施設がある」
「魔獣を保護している施設、ですか?」
「ああ。魔獣が好きなら、行ってみるといい。ゴーラン、行くぞ」

 ジェラールに呼ばれたゴーランは、ゆっくりとそちらに向かって歩いてゆく。
 それを確認したジェラールは今度こそ踵を返すと、振り返ることなく部屋を後にした。

 ミレイナは遠ざかる足音を扉越しに聞きながら、ふうっと息を吐いた。

「食べるつもりじゃなかったのね」

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